特別養護老人ホーム愛の園
鼻腔内喀痰吸引実施マニュアル
口腔内吸引の対象
要介護高齢者は、咳をする力や飲み込む力の低下、病気などが原因となり、痰・唾液・食物残渣を自分で口の外に出したり飲み込んだりすること(嚥下)が難しくなることがある。まず口腔ケアを行い、とりきれない場合に口腔内・鼻腔内の吸引の対象となる。
痰、唾液、食物残渣が口腔内や気道に溜まると呼吸状態が悪くなり、肺炎や窒息などを引き起こし命にかかわることがある。(65歳以上の高齢者の死因第1位は窒息)
口腔内吸引の目的
鼻腔内の痰や唾液などを取り除く(咽頭まで)。
(医療行為であり医師・看護職員・介護職員の連携・協働が必要とされる)
手順
過程 |
項目 |
行為内容 |
留意点 |
準備 |
手洗い |
流水+せっけんにより手洗いする。速乾性擦式消毒剤でもよい。 必要によりマスク・ガウンを着用 |
・菌を持ち込まない |
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体調確認 |
本人に確認or観察 |
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手順1 |
吸引依頼or 意思・状態確認 |
本人から依頼を受け、あるいは本人の意思・状態を確認する。 吸引の環境、姿勢、口の周囲、口腔内・鼻腔内を観察する。 |
・必要性があるか ・効果的な体位か ・唾液の貯留、出血、腫れ、乾燥をチェックする |
手順2 |
手洗い・手袋 |
両手を洗い、利き手に手袋をする。 |
・本人の体に触れた後は手洗い |
手順3 |
吸引カテーテル |
吸引カテーテルを不潔にならないよう取り出す。 |
・衛生的取扱い ・先端に触らず、周囲にぶつけていないか |
手順4 |
吸引器の起動 |
手袋をしていない方の手で吸引器のスイッチを入れる。薬液浸漬方の場合、水を吸って吸引カテーテル内腔を洗い流すとともに、吸引カテーテルの周囲を洗う。 決められた吸引圧になっているか確認。 |
・衛生的取扱い ・看護師が定めた適切な吸引圧であるか |
手順5 |
カテーテルの水切り |
吸引カテーテルの先端の水をよく切る。 |
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手順6 |
声かけ |
「○○さん、今から鼻の中の吸引をしますよ」と声をかける。 |
・本人に合図し心の準備をしてもらえたか ・必要に応じて看護師の協力を得て行えているか |
手順7 |
吸引開始 |
吸引カテーテルを鼻腔内に入れ吸引する。 |
・カテーテルの先端から5〜7pくらいのところを、ペンを持つように握る ・静かに挿入し鼻腔内の分泌物を吸引できたか。奥に入りすぎていないか ・粘膜の損傷・出血に十分注意する ・咽頭後壁を強く刺激すると嘔吐反射が誘発されるので、食後まもなくは注意する |
手順8 |
使用済みカテーテル |
使用済みカテーテルの外側を先端に向かってティッシュで拭き取った後、洗浄水(水道水)を吸って内側を洗い流す。 |
・外側に分泌部が付いたカテーテルをそのまま洗浄水に入れて水を汚染していないか ・洗浄水、消毒液を吸い過ぎていないか ・カテーテルに分泌物が残っていないか |
手順9 |
吸引終了 |
吸引器のスイッチを切る。 |
・不快な機械音を早く消す |
手順10 |
手袋 |
手袋をはずし、手洗いする。 |
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手順11 |
確認・観察 |
本人に吸引が終わったことを告げ、確認できる場合は痰がとれたかを確認する。 吸引した物の量、性状について確認する。 |
・本人の意思を確認しているか。痰が切れていない場合はもう一回繰り返すかを聞いているか。 ・苦しい時間を頑張ったことを認める声かけができたか ・本人の状態を観察したか ・吸引した痰の量・色・性状を見て、異常がないか確認したか。(異常があった場合、看護師、医師に報告したか。) |
手順12 |
廃液の廃棄 |
吸引瓶の廃液量が70〜80%になる前に廃液を捨てる。 |
・手早く片付けているか ・吸引瓶の汚物は適宜捨てる |
手順13 |
洗浄水 |
洗浄水は毎回取り替える。 |
・洗浄水は継ぎ足さず、瓶ごと取り替える |
手順14 |
記録 |
喀痰吸引等業務実施状況報告書に記録する。ヒヤリハットがあれば報告を提出する。 |
・記録し、ヒヤリハットがあれば提出したか |